欧州委員会は、2021年から2027年にかけて実施される新たなエラスムスプログラムの実施を決定した。新たなプログラムは、対象者を現在の400万人から1200万人に増加、予算を倍増させて実施される。
主な変更点 ―予算を倍増し、プログラム対象者を拡大
- 予算規模はこれまでの147億ユーロから、およそ2倍に拡大し、300億ユーロになった。内訳は、259億ユーロが教育訓練(Education and Training)、31億ユーロが青少年(Youth)、5億ユーロがスポーツ(Sport)となっている。
- プログラムの名称が「エラスムス+」(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)から「エラスムス」へと変更。
- より包括的で社会的弱者でも参加しやすいプログラムを目指す。
- 将来性のある分野(再生可能エネルギー、気候変動、環境工学、AI、デザイン)に着目したプログラムの提供を行う。
- 現在行われているプロジェクトに加え、新たなプロジェクトも実施する予定。プログラムは引き続き、初等中等教育、職業教育、高等教育等を対象とし、それらの合理化を図る。また、申請や事務手続きの負担軽減や簡素化を目指す。
- 欧州人としてのアイデンティティを高めるため、青少年に欧州の文化遺産や多様性に触れる機会を提供するプロジェクト「DiscoverEU programme」を開始する。18歳で欧州に居住するものを対象に、欧州各地を電車でめぐるインフォーマル学習を提供する。なお、候補者はエラスムスプログラムが選定した団体によって、選考される見込みとなっている。
欧州は2025年までに欧州教育圏(EEA)(本サイト2018/2/19投稿記事)を構築する政策的目標を掲げているが、予算の増加はこれを支援するとされている。
エラスムスプログラムの成功をよりもたらすためには、助成金の増額が必須であると以前から提唱されてきた(本サイト2017/4/20投稿記事)。また、社会的・経済的弱者もプログラムに参加できるよう配慮をすべきとの意見が、欧州各国の首脳から出ていた(本サイト2017/9/11投稿記事)。同様の観点は、2018年1月から3月にかけて行われた意見公募においても挙げられていた。今回の新たなプログラムはそれら意見を踏まえた内容となっていることが伺える。
エラスムスプログラムの中には域外の国であっても参加が可能なものもあり(本サイト2018/3/27投稿記事)、日本の大学も同プログラムに参加している。また日本国籍の者でも欧州の大学に在籍するなどして、エラスムスプログラムに参加することも可能である。