インドやアフリカで拡がるオンライン教育

インドやアフリカは経済的な発展が著しい地域として注目されているが、高等教育分野においても進展がみられる。
World Education Service(WES)によると、近年、オンライン教育は低コストで多くの人が高等教育にアクセスできる手段として拡大傾向にあり、2017年時点で約9,400コースが世界中で提供されている。
特に、南アジアやサブサハラ・アフリカにおいては同地域の人口増加に対し、伝統的な教育手法では高等教育の拡大化が困難であるため、MOOC※1をはじめとするオンライン教育が魅力的な手段として急速に捉えられるようになってきている。WESによると、インドでは国を挙げてオンライン教育を推進しており、また、アフリカでは世界銀行が設立したオンライン大学が学生を集めている。本稿では、インドとアフリカにおけるオンライン教育を中心に、WESの発表をまとめる。

※1ムーク(MOOC)(本サイト2015/9/8投稿記事)
Massive Open Online Course(大規模公開オンライン講座)と呼ばれ、原則として入学要件を問わず、多くの人が同時に無料で受講できるオンライン上の講座のこと。一般的にオンラインプラットフォーム上で提供される。

オンライン教育が急速に成長するインド

2016年にインドの人材開発省(Ministry of Human Resource Development)がインドのMOOCであるSWAYAM(Study Web of Active Learning for Young and Aspiring Minds)を立ち上げた。人材開発省によると、2017年時点で、約2,000のコースがSWAYAMでは提供されており、約60,000人がオンラインコースを修了したという。コースによっては、大学の単位に読み替えることができ、インドの大学に助成し、監督する立場にあるUGC(University Grant Commission)は「大学はMOOCを通じて得た単位の移行を拒否してはならない」と述べ、MOOCを強力に推進している。

MOOCの利用状況に関して2017年7月時点では、2017年の上半期において、MOOCのプラットフォームの一つであるCourseraのインド人ユーザーが、毎月約50,000人ずつ増加していたという。また、Edxへのインド人ユーザーが2016年に73%増加したことも報告されている。
上記にとどまらず、インドにおけるオンライン教育には、工学・科学系のプログラムをオンラインベースで提供するプログラムであるNPTEL(National Programme on Technology Enhanced Learning)がある。

さらに教育のオンライン化によって、学習歴の管理もオンライン化される傾向にあるが、インドでは学位証書や成績証明書を電子化して保管するNational Academic Depositoryを有し、雇用主や教育機関はオンライン上で証書を確認することができる。このデポジトリ(保管場所)は2017年に正式に立ち上げられ、218の参加機関から約1,100万枚の証書を保管している。

サブサハラ・アフリカのケース、オンライン大学の増加から他国との連携まで

アフリカには世界銀行が1997年に設立した大学African Virtual University(AVU)があり、2015年にはアフリカにおいて約63,000人の学生にプログラムを提供したとされている。その規模について、30ヵ国以上の53機関からプログラムが提供され、遠隔・eラーニングの最大のネットワークとみなされている。現在、AVUはAfrica Virtual and E- Universityと名前を変えて、英語とフランス語で教育を提供している。

AVUはオンライン大学のほんの一例であり、アフリカにはその他にも複数のオンライン大学がある。あるオンライン大学では、2017年-2018年の年度に、約20,000人の学生を受け入れている。一方で、従来の大学もオンラインプログラムの提供に乗り出しており、遠隔教育を扱う部署を学内に設置する大学もある。
さらに他国との連携については、インド政府とアフリカ連合の47ヵ国がパン・アフリカeネットワークプロジェクト(Pan Africa e-Network Project)を締結し、インドとアフリカの大学をtele-education software systemを通じて結ぶことになった。同プロジェクトにより、両国間で医療分野の連携が行われ、医療に長けているインド側がアフリカの医学データをチェックし、助言することが可能になった。

オンライン教育は高等教育を広めるか?

オンライン教育の中でも中心となっているMOOCは、様々な目的のために提供されており、中には学位プログラムの一部として提供されるものから、(本サイト2015/6/17投稿記事)、難民向けに高等教育を提供する手段として提供されているMOOCもあり、(本サイト2017/6/21投稿記事)、高等教育を広めることを目的として提供されている事例もある。
MOOC受講者の多くは既に学位を取得した者といわれているが、インドやアフリカでも同様の動きが見られているという。

MOOCはコストがほぼかからず、より多くの人に高等教育を提供できるツールと評価されているものの、その大半は学位資格の取得に繋がりにくいとされている。一方、オンライン教育の拡大に伴って、マイクロクレデンシャル※2や短期間で取得できる資格が拡大するといった新たな傾向も見られている。

※2マイクロクレデンシャル(Micro-credentials)
一般的に、学位取得を目指す学習よりもより細かく区切られた学習単位であり、個別に大学などの主体が認証したものとされる。詳細な定義は各国・地域で異なり、名称についてもバッジやナノディグリー等、様々である。オーストラリアでは、バッジを集めることによって学位取得が可能な大学があったり(本サイト2015/9/3投稿記事)、オランダでは、マイクロクレデンシャルに関して資格連携協定という形で他の高等教育機関と連携している例もある(本サイト2017/1/19投稿記事)

原典:World Education Services(WES)(英語)

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