中国教育部は、2009年から教育部高等教育教学評価センター(HEEC)に委託し、「高等教育質モニタリング国家データプラットフォーム」の構築を推進してきました。客観的データに基づいた恒常的な質のモニタリングという新たな質保証手法を導入するためです。現在このデータプラットフォームを通じて、全国1,200以上にのぼる、学士課程以上の教育を提供している高等教育機関から、年次データをオンラインで収集し、教育の質のモニタリングを行っています。発足以来10年の間に、当該データプラットフォームにはさまざまな改善が加えられ、現在では蓄積された膨大なデータを使って次のようなサービスを関係各方面に提供しています。
【国や地方政府】
・政策策定のための根拠資料の提供
【大学】
・年次データ分析書の提供による内部質保証支援
・リスクの警告
・ベンチマーク
【HEECの機関別評価】
・評価委員への受審大学のデータ分析書の提供、評価作業における評価委員のデータプラットフォームへのアクセス権の付与(詳細な客観的証憑による評価のため)
【HEECのプログラム評価】
・データプラットフォームのデータによる教育プログラムの評価
【一般社会】
・各種質報告書の公刊による教育の質に関する情報公開
データ分析書は、大学が毎年国に提出するデータに基づいて、大学ごとに作成されます。そこでの詳細な分析は大学にフィードバックされ、大学の自己改善に役立てられています。大学の質保証担当者からは、この分析書は大学にとって、将来の発展計画や組織改編のための客観的な材料になるとして歓迎されています。
また、毎年国の要求に沿った教育データの提出が義務付けられたことで、大学での教育の質の点検が進み、内部質保証システムがより強化されました。
しかし一方では、国家データプラットフォームに沿った形にデータを変換して提供する作業は、大学側に膨大な労力と負担を強いており、改善を求める声が聞かれます。
国家が中央集権的に大学のデータを収集するこのようにデータプラットフォームは、どの国にも適するとは言えないでしょう。しかし中国のような広大な国土に多くの高等教育機関を抱える国においては、こうした情報技術を駆使した質保証の仕組みが今後とも不可欠となることでしょう。
(文責:J.F.)