ドイツ:大学の国際化オーディット

正式名称
HRK-Audit “Internationalisation of Universities”

実施主体
HRK(ドイツ大学学長会議:German Rectors’ Conference)
ドイツの国立および国の承認を得た総合大学と専門大学の自主的な連合組織。現在268の大学が加盟し、加盟大学にドイツの学生の92%以上が在籍。

実施年
2009年~

概略
ドイツ大学学長会議(HRK)による国際化オーディットは、ドイツの大学が国際化の取組を戦略的に展開し、学内にそれを定着させることを支援する目的で、2009年に開始した。

受審対象は、HRKの加盟大学。HRKが毎年加盟大学に参加を募り、参加希望大学の中から大学の規模や性格を勘案してHRKがその年の受審大学を選定する。オーディットは有識者チームと大学が結成したプロジェクトグループが共同で行い、HRKはオーディット全体の調整とプロセスの監督を行う。オーディットは1回限りの受審ではなく、受審した大学に対する再オーディット(Re-Audit)の仕組みも整えられている。オーディットの実施経費は2016年末まではドイツ連邦教育研究省(BMBF)が助成し、受審大学が一部負担していた。2017年以降は完全に受審大学負担となっている。

<初回のオーディット>
オーディットでは、大学の国際化に関する目標に照らした取組の現状について、大学自身による振り返りに外部の視点を交えて分析され、国際化をさらに進めるための提言が4領域ごとにまとめられる。オーディットのプロセスは12か月で、キックオフ協議、自己評価、訪問調査(3日間)、最終報告書および提言の取りまとめで構成される。オーディットが終了すると大学に受審証明書が交付される。

【4つの領域】

  1. 計画と実行:全学部門から各部局にわたる国際化に向けた運営と体制に着目
  2. 学修と教育:学修・教育環境の国際化ならびに学修プログラムの国際化に着目
  3. 研究・知識移転:研究および研究結果の活用にかかる国際化に着目
  4. 助言と支援:機関全体の管理運営体制の国際化に着目

近年では、学生数10, 000人以下の小規模大学を対象にした「コンパクト・オーディット(Audit compact)」の仕組みも導入されている。国際化オーディットの縮小版として小規模大学のニーズやコスト等を踏まえていることを特徴とし、プロセスは約9か月(訪問調査は2日間)となっている。また、さらに小規模な大学を対象としたオーディット・戦略ワークショップ(Audit strategy workshop)も実施されている。

2020年時点の受審状況は、90校が国際化オーディットを受審済(うち11校はコンパクト・オーディット)、8校(うち2校はコンパクト・オーディット、3校はオーディット・戦略ワークショップ)が受審中である。

<再オーディット>
HRKでは、初回のオーディットを受審した大学向けの再オーディットの仕組みを2012年に開発し、2014年に始動した。大学の国際化をさらに具体的に推し進めることが意図されている。

再オーディットのプロセスは3年半に及ぶ。はじめに大学は、今後3年間の国際化に関する目標と達成に向けた取組をまとめた実施計画書を作成する。その後、大学が計画に対する中間報告書および最終報告書をまとめる。訪問調査を経てオーディット報告書がまとめられ、最後に大学に受審証明書が交付される。2020年時点の受審状況は、21校(うち5校は2012/2013年に再オーディットの試行版を受審)が再オーディットを受審済で、4校が受審中である。

▼国際化の優良事例集等
HRKは、国際化オーディットを受審した大学の国際化に関する取組の優良事例を4領域ごとに紹介した報告書「Building upon International Success」(2015年)を刊行している。また、大学の国際化の優良事例や知識・経験を加盟大学間で共有することを目的として、「HRK-EXPERTISE Internationalisation」プロジェクトを立ち上げ、助言やネットワーキング活動を行った(本プロジェクトは2020年末まで実施)。プロジェクトのウェブサイトには国際化オーディット受審大学の結果の最新情報等が掲載されている。

原典リンク 
Audit “Internationalisation of Universities”(英語)
HRK-EXPERTISE Internationalisation (ドイツ語)

参考資料
大学評価・学位授与機構(2014)「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要:
ドイツ」
(p.33-35)

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