国境を越える教育(TNE)の質をどう保証するか:英国で制度見直し

 国境を越える教育(Transnational Education:TNE)を提供する英国の学位授与機関(大学等)を対象に質保証を行う「TNEレビュー※1」が資金配分機関からの支援終了を契機に、変革の時期を迎えている。現在、英国高等教育質保証機構(QAA)等は、TNEレビューの今後の方針案に関するコンサルテーション(オンラインアンケート方式、2020/1/3〆切)を実施している。

TNEについて

 QAAは、TNEを「学位授与機関が海外で提供する高等教育」と定義しており、遠隔教育、機関間協定、ブランチキャンパスなどによって提供される教育プログラムが含まれる。英国では2017-18年に139の大学が計225カ国/地域で、69万人以上の学生を対象にTNEを提供した。

背景

 これまで英国のTNEレビューは、英国各地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)の資金配分機関からQAAに委託され、QAAは海外ブランチキャンパスへの訪問調査等のレビューを実施してきた。しかし当該契約は2018年9月に終了したため、現在英国内で統一したTNEの質保証制度は存在しない。英国各地域の資金配分機関はTNEに特化した質保証活動は実施しておらず、各地域の質保証制度によりTNEの質も保証する仕組みとなっている。

 QAAと英国大学協会(UUK)、高等教育カレッジ連合(GuildHE)は2018年11月から会合を重ね、今後の英国TNEの質の向上(quality enhancement)に関する基本理念及び財政的に持続可能な方法でTNEレビューを実施するモデル2案を策定した(下記)。

英国TNEの質向上に関する基本理念

 TNEの質の向上を目的とするあらゆる制度は以下の理念を満たすべきとされている。

  1. 英国全地域で共通して行われること
  2. TNEを提供するすべての学位授与機関に適用されること
  3. あらゆる形態のTNEに有効であること
  4. 費用対効果が高いこと
  5. 柔軟で素早く対応しうること
  6. 高等教育機関の負担を最小化すること(コース別または機関別レビュー、職能団体等による専門職教育アクレディテーションとの重複の回避)
  7. 学生の経験を中心に据えていること
  8. TNEを受講する学生と英国本国の学生の学習経験や学習成果の同等性を保証すること
  9. 英国の質保証制度に対する国際的な信頼と評判を維持すること
  10. 質の向上を主眼とする(enhancement-led) 制度であること
  11. 確立した指標とデータを用いること

モデル1 既存の質保証制度を信頼し、必要に応じ追加の方策を実施

〇基本的な考え方:

  • 現在英国内の地域ごとに策定されている、英国及び海外で提供される既存の高等教育質保証制度を信頼する。
  • TNEに関して必要が生じた場合、質の向上に向けた追加の方策(TNE相手国への訪問調査やテーマ別レビューなど)を適宜実施する。

モデル2 TNE相手国で定期的に質保証を実施し、既存の質保証制度を補完

〇基本的な考え方:

  • これまでQAAが実施してきたTNEレビューに類似。レビュー方法や高等教育機関が提出すべき情報量の簡略化を図る一方、対象地域や対象機関数を増やす。
  • ピアレビュー方式を踏襲し、優良事例と改善点を高等教育セクターで共有する。
  • 毎年2カ国/地域以上でレビューを実施(QAAは毎年3カ国/地域で、それぞれ10の事例のレビューを想定)※2
  • TNE相手国の質保証機関と協力を図る(情報共有、ジョイントレビュー等)。
  • レビュー実施費用をQAAの会費として徴収する。

コンサルテーション後の動き

 コンサルテーション実施後には、QAA、UUK、GuildHEによる回答の分析が行われ、コンサルテーション結果のサマリーとTNEの質保証にかかる新たな制度の策定に向けたアクションプランが作成される。

※1 TNEレビューの詳細については、「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 英国 第2版(機構国際課作成)(p.57)を参照のこと。ギリシア及びキプロスで実施されたTNEレビュー(2015年)に関する記事はこちら(当サイト2016/5/17掲載記事)
※2 これまでのTNEレビューでは毎年1カ国/地域でレビューを実施。

原典①:QAA(英語)
原典②:QAA(英語)

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