イギリス:QAAが海外大学のプログラムアクレディテーションを開始

 2022年7月、英国高等教育質保証機構(QAA)は、英国外の高等教育機関のプログラムを対象とする「国際プログラムアクレディテーション(International Programme Accreditation:IPA)」を開始した。
 QAAは、2017年から海外の高等教育機関を対象に機関別レビュー「国際質レビュー(International Quality Review:IQR)※1」を実施しているが、その経験に基づき新たにプログラムレベルのアクレディテーションを提供する。
 IPAはIQRと同様に、国際的な基準である「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)(NIAD-QE国際課まとめ)」を踏まえて実施される。

※1  IQRについては、本サイト2016/4/26掲載記事本サイト2020/2/17掲載記事を参照。報告書はQAAのウェブサイトで閲覧できる。2022年9月現在、アラブ首長国連邦、インド、クウェート、ジブラルタル、バーレーン、マカオなどの機関が受審している。

■「国際プログラムアクレディテーション(IPA)」の概要

 IPAの概要は以下のとおりである。

  • 英国外の高等教育機関のプログラムに対し、独立したピアレビューを提供する。
  • 国際的な基準である、「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)」を踏まえた質保証を行う。
  • レビューチームには、分野の専門家が少なくとも1人含まれる。

 実施方法等の詳細はメソッドハンドブック(International Programme Accreditation: Method Handbook for Higher Education Institutions Outside the UK)にまとめられている。

〇受審のメリット

 IPAは広範な分野※2に対応しており、プログラム単位で国際的な質保証基準であるESGを満たすことを示すことができる。QAAは、IPAを受審するメリットとして次の5点を挙げている。

①国際的なベンチマークに照らして質保証されたプログラムであることの証明
②国際的な地位の向上
③改善や卓越性の推進
④英国の機関とのパートナーシップの進展
⑤ウェブサイトやマーケティング資料におけるIPAのバッジの使用

※2 主な対応分野は以下のとおり。詳細についてはメソッドハンドブックの「Appendix 1」を参照。
英語学・英文学(English studies)、ケルト研究(Celtic studies)、言語・地域研究(Languages and area studies)、歴史学・考古学(History and archaeology)、哲学・宗教学(Philosophy and religious studies)、教育学・教職(Education and teaching)、複合・一般教養(Combined and general studies)、メディア・ジャーナリズム・コミュニケーション学(Media, journalism and communications)、クリエイティブアート・デザイン(Creative arts and design)、舞台芸術(Performing arts)、地理学・地球・環境学(Geography, earth and environmental studies)、スポーツ・運動科学(Sport and exercise sciences)、農学・食糧・関連研究(Agriculture, food and related studies)、物理学・天文学(Physics and astronomy)、一般・応用科学・法科学(General, applied and forensic sciences)、数理科学(Mathematical sciences)、材料学・工学(Materials and technology)、経済学(Economics)、政治学(Politics)

〇プロセス

 IPAは4段階(①申請、②レビュー、③アクレディテーション(認定)、④中間サイクルレビュー)で構成されている。

①申請

 受審機関及びプログラムは以下の申請基準を満たすエビデンスを提出し、IPAのレビューの対象となるか判定される。

  • 申請機関は、高等教育機関として国の質保証機関または所在する国等の関係省庁によって登録されているか、または適切に認証されている。
  • 国の質保証機関または関係省庁は、申請機関がQAAのIPAに申請する意向を把握している。
  • IPAのプロセスは英語で実施され、必要な英訳に関して、申請機関がすべての責任を負う。
  • 申請機関は財政的に健全で持続可能性がある。
  • 申請機関は構内のインフラ、主要施設、資源を利用する法的権利を有している。
  • 申請プログラムは最低3学年が入学済であり、うち1学年は申請時に卒業している。
  • 申請プログラムは、厳格な内部質保証プロセスと、現地の質保証機関による外部質保証プロセスを経ている。
  • 適切な授与機関からの学位授与の承認に関する合意がある。
  • 申請プログラムは内部質保証プロセスと、関連する外部質保証プロセスを成功裏に完了している。
  • 申請プログラムが意図した学習成果が、その達成方法の詳細とともに整っている。
  • プログラムの設計にあたり、外部の参考資料、外部の専門的知識、現在の専門的事例から情報を得ている。
  • プログラムの施設と学習資源が整っている。
  • 申請プログラムは可能性のある就職先や進学の機会を特定している。

②レビュー

 QAAのレビューチームが、受審機関が提出した書類やエビデンスに基づき書面調査を行う。その後、2-4日間の訪問調査(直接訪問またはオンライン)を実施し、受審プログラムがESGの第1部「内部質保証に関する基準とガイドライン」に示されている基準10項目を満たすか審査する。
 評価結果は「IPAのすべての基準を満たす」、「IPAのすべての基準を条件付きで満たす」または「IPAの基準を満たさない」の3段階で判定される。

③アクレディテーション(認定)

 QAAのアクレディテーション委員会が、レビューチームの報告書と指摘事項を検討し、受審プログラムを認定するか否か判定する。認定された場合は、認定期間中、IPAの認定バッジを受審プログラムやマーケティング資料に使用できる。また、QAA はIPAの報告書を、受審機関は報告書に対するアクションプランを各ウェブサイトで公開する。
 認定期間は最大5年間。(④の中間サイクルレビュー時に、5年間の認定期間終了まで認定バッジを維持できるかどうか判断を受ける。)

④中間サイクルレビュー

 レビューを終えてから2-3年後に、書面審査を実施する。受審プログラムチームは、③での指摘事項に関するエビデンスを提出し、ESGの基準の充足状況に影響を及ぼす可能性のあるプログラムの変更点がある場合も概要説明が求められる。QAAのレビューマネージャーは、QAA のレビュアーとともに評価する。

〇費用

 申請基本料は£1,030(税抜)(約16万4,800円)である。加えて、レビューにかかる費用が受審組織の規模や複雑さによって決定される。(※日本円の換算は1£=160円で計算)

表1 国際プログラムアクレディテーション(IPA)と国際質レビュー(IQR)の比較

IQRに関しては本サイト2020/2/17掲載記事を基に作成
参考:国際アクレディテーションに関する動向

原典①:QAA(英語)
原典②:QAA(英語)
原典③:QAA(英語)
原典④:QAA(英語)
原典⑤:QAA(英語)

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