欧州:高等教育質保証基準の検証プロジェクト「QA-FIT」始動へ-新時代にふさわしい基準とは

 ENQA(欧州高等教育質保証協会)は2022年5月、ボローニャ・プロセス※1の進展を踏まえ、ESG(「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン」(2015))※2がこれからの時代にもふさわしい質保証基準となっているかを検証していく新プロジェクト「Quality Assurance Fit for the Future (QA-FIT)」を始動すると発表した。

 ESGとは欧州高等教育圏内における内部質保証、外部質保証及び質保証機関に関する基準とその運用のためのガイドラインである。欧州高等教育大臣会合※3の要請を受け、ENQA等により2005年に策定され、2015年に改定された。国や地域間の相違を認めたうえで共通の質保証基準を設けるもので、各質保証機関の多様性を尊重し、策定されている。※4

※1 ボローニャ・プロセスの詳細については、NIAD-QE国際課まとめを参照。

※2 ESG = “Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (2015)” (ENQA). ESGの概要については、NIAD-QE国際課まとめを参照のこと。
また、大学評価・学位授与機構(当時)による全文翻訳(2016年1月)はこちら

※3 欧州高等教育大臣会合:ボローニャ宣言において提唱されたプロセス達成に向けて、2001年から2年ごとに開催されている。改革内容の進捗の把握や活動方針の追加が行われ、会議ごとに共同声明(コミュニケ)が発表されている。次回は2024年、アルメニアで開催予定。 (各コミュニケについてはこちら:NIAD-QE国際課まとめ)

※4 大学改革支援・学位授与機構 (2021) 「高等教育に関する質保証関係用語集」(オンライン版)より一部抜粋。

●新プロジェクト「QA-FIT」

 正式名称は「Quality Assurance Fit for the Future」。「QA-FIT」プロジェクトは、エラスムス・プラス(NIAD-QE国際課まとめ)のプロジェクトとして採択された。ENQAがコーディネーターとして主導し、EQAR(欧州質保証機関登録簿)がプロジェクト・パートナーとして連携する。両機関は、2022年5月の会員へのお知らせ(ENQA)及びニュースレター(EQAR)において本プロジェクトについて言及しており、2022年後半のプロジェクト開始後、公式ウェブサイトに詳細を掲載する予定としている。

 本プロジェクトは、最初の策定から十数年、2015年の改定からも既に7年が経過したESGが「欧州高等教育圏(EHEA)※5の将来に向けてふさわしい質保証基準となっているかどうか」を検証する取組である。

※5 欧州では、単位の互換性や学生・教職員の流動性を高めることにより、国境を越えて共同体としての結びつきを強め、欧州高等教育圏(European Higher Education Area:EHEA)の確立を目指している。国際的な共同教育プログラムやこれらの質保証における取組についても、国を越えた枠組みや制度が共同で策定されている。(NIAD-QE国際課まとめ)

●ESG改定を求める声

 EHEAにおいて現在、オンライン学習、マイクロクレデンシャル(本サイト2022/5/10投稿記事)欧州大学イニシアチブ(本サイト2019/7/24投稿記事)等の取組が急速に拡大し、高等教育そのものが大きな変化を遂げている。EHEAツール※6の最たる成功例であるESGが、このように変化し続けるEHEAの実態に見合うものとなっているかどうか、またESG自体も改定から年月が経っていることを背景に、様々なステークホルダーからESGの再改定を求める声が近年、高まっていた。

 こうした状況を受けて、ENQAをはじめ、EUA(欧州大学協会)、EURASHE(欧州高等教育機関協会)、ESU(欧州学生連合)のE4グループは2020年8月の声明(“The ESG in the changing landscape of higher education”)で、「ESGはあらゆる高等教育の文脈において柔軟に適用することができるよう設計されており、発展を続けるEHEAにおいても引き続き有効である」との立場を明らかにしている。しかしながらこの声明には、ESG改定の議論を否定するものではなく、改定に向けての議論は継続して行い、あらゆる角度からステークホルダーのニーズを検証していく、との見解も盛り込まれていた。

「QA-FIT」の趣旨

 上記のような動向を背景に、新たな時代により合致(=Fit)したESGを検討する今回のプロジェクト「QA-FIT」が採択されるに至った。プロジェクト・パートナーであるEQARは、プロジェクトの趣旨について、①直近のEHEAの動向・展開を反映するとともに、将来の質保証の発展をも見込んだESGにする、②ESGにおける質保証基準を、今後の高等教育にさらに柔軟に適用していく、と説明している。

プロジェクトの骨子

◇内部質保証及び外部質保証(第三者評価)の方針や実践の具体例を収集し、包括的な「マッピング作業(Mapping Exercise)」を行う。

◇様々な文脈においてESGをより柔軟に、革新的に適用していくため、実践可能な事例を紹介する。

◇ステークホルダーとの協議を深めていく。

◇各国政府/EU/EHEAにおいて政策議論を行うための提言を作成する。

今後の予定

 QA-FITプロジェクトは2022年後半に始動し、様々な分析や調査を実施の上、各国教育省との協議を予定している。ボローニャ・プロセスを推進してきた欧州高等教育大臣会合におけるこれまでの成果も考慮しつつ、最終的に政策への提言を行っていく。

原典①:ENQA(英語)
原典②:EQAR(英語)
原典③:ENQA(英語)

参考①:「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG 2015)」 翻訳版

大学評価・学位授与機構(当時)による全文翻訳(2016年1月)はこちら

参考②:ESGの役割について

「大学質保証ポータル」ウェブサイト (大学改革支援・学位授与機構運営)より:

 「(ESG)の基準とガイドラインは、第1部:内部質保証、第2部:外部質保証、第3部:質保証機関の3部の基準とガイドラインからなり、これらが一体的に質保証の枠組みを構成しています。
 特に、第2部の外部質保証は、第1部の基準に基づいて大学自らが行う内部質保証を前提として第三者(質保証機関)による外部評価の基準を定めています。これらの基準は大学や質保証機関が相補的に機能するように設計されていて、相互に利害関係にある主体がそれぞれの役割を担いつつ独立して質保証に寄与することを明確にしています。」

参考③:ESGの普及・改定の歩み-QA Updates投稿記事より

1.欧州質保証ガイドライン(ESG)の検証プロジェクト:政策立案者に向けた提言
(本サイト2018/9/13投稿記事)

2.「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG) 」の改定案が公表
(本サイト2014/12/22投稿記事)

3.「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG) 」が改定予定
(本サイト2014/4/18投稿記事)

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