「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)」改訂のための運営委員会が発足

 欧州高等教育質保証協会(ENQA)は2024年10月、欧州学生連合(ESU)、欧州大学協会(EUA)、欧州高等教育機関協会(EURASHE)とともに※1、「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG 2015)(本サイト「欧州」>「地域レベルの高等教育政策」ページ)の改訂に向けた運営委員会を発足させたことを発表した。これは、2024年5月にアルバニアのティラナで行われた「欧州高等教育圏大臣会合2024」における共同声明(コミュニケ)※2を受けた取組であり、これにより、かねてから議論されてきたESG改訂に向けた動きが本格化した。

※1 これら4つの組織は、ESGの主要な策定者であり、「E4グループ」を構成している。ESGの策定は、E4グループを中心に、エデュケーション・インターナショナル(EI)ビジネスユーロップ(BUSINESS EUROPE)欧州質保証機関登録簿(EQAR)が協力して行っている。 ESGは、2005年に欧州の高等教育担当閣僚によって採択されたが、その後、質保証、資格枠組み、資格・学位の承認、学習成果の活用と推進等、ボローニャ・プロセス本サイト「欧州」>「地域レベルの高等教育政策」ページ)全体の進展を踏まえ2015年に改訂され、学生中心の学習と教授(teaching)にさらに力点を置いた内容となった。
 原典(英語)はENQAの公式ウェブサイトに掲載。大学評価・学位授与機構(当時)による全文翻訳(2016年1月)はこちら
※2 ティラナ・コミュニケの詳細は、本サイト「欧州」>「地域レベルの高等教育政策」ページを参照のこと。概要は本サイト2024/8/6及び2024/8/7投稿記事でも紹介している。原典は、”Tirana EHEA Ministerial Conference 29-30 MAY 2024″ 公式ウェブサイトに掲載。

◆ESG改訂に向けて:ティラナ・コミュニケの要請

 ティラナ・コミュニケは、以下のように述べてE4グループにESGの改訂を要請している。


※3 ボローニャ・プロセスや、欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)大臣会合の共同声明の実施状況を監督する組織。公式ウェブサイトはこちら

※4 ボローニャ・ツールの1つで、原語は「European Approach for Quality Assurance of Joint Programmes」。2014年にBFUGによって策定され、2015年のエレバン(アルメニア)でのEHEA大臣会合で採択された、欧州における共同教育プログラムの統一した質保証の枠組み。ESG 及び 「欧州高等教育圏資格枠組み(QF-EHEA)」に基づいている。欧州の共同教育プログラムが欧州質保証機関登録簿(The European Quality Assurance Register for Higher Education: EQAR)に登録されている質保証機関によってこのアプローチに沿った評価を受審することでEHEA域内のほかの国でもその評価結果が有効となる、というものである。欧州的アプローチについては、本サイト2023/1/27投稿記事2024/6/12投稿記事も参照のこと。

※5 Tirana Communiqué 2024 (p.3)

◆これまでの議論

 ENQAは、ESG改訂に向けて2022年から実施された「QA-FIT」プロジェクト※6で得られた調査結果から、質保証機関や高等教育機関、教育省庁、学生連合といったステークホルダーは、欧州の質保証枠組みとしてのESGの重要性と有効性を高く評価していると述べている(本サイト2024/7/31投稿記事)。現行のESGは学習・教育の質向上や学生のモビリティ促進に貢献しているという共通認識がある一方で、ESGがカバーする範囲の拡大の必要性については議論が続いている。例えば、欧州の高等教育分野では現在、オンライン教育やマイクロクレデンシャル等の取組が急拡大しており、ESGの枠組みが高等教育の最新動向やイノベーションに対して質保証の対応力を制限してしまっているのではないか(to limit the responsiveness of quality assurance)という議論も巻き起こっている(本サイト2023/9/1投稿記事)。ESGが2015年の改訂で学生中心の学びへの転換に大きく寄与したことを背景に※7、こうした範囲拡大によって、ESGが高等教育改革のさらなる促進に貢献するだろうというステークホルダーの期待を示している。

※6 プロジェクトの正式名称は「Quality Assurance Fit for the Future」(本サイト2024/7/31、2023/9/1及び2022/6/9投稿記事)。エラスムス・プラス2021-2027(本サイト「欧州」>「地域レベルの高等教育政策」ページ)のプロジェクトとして、2022年6月から2024年11月までの2年半にわたり実施された。2005年の初版から20年弱、2015年の改定からも既に9年が経過したESGが、「EHEAの将来に向けてふさわしい(=fit)質保証基準となっているかどうか」を検証する取組である。

※7 2015年のESG改訂では、学生中心の学習・指導へのパラダイムシフトといった情勢の変化を踏まえ、第1部「内部質保証に関する基準とガイドライン」内に新たに「学生中心の学習、教授及び評価」の項目が設けられた。(本サイト「欧州」>「地域レベルの高等教育政策」ページ

◆運営委員会の体制

 本改訂プロセスは、2012年から2015年の前回の改訂手法を踏襲している。具体的には、改訂を主導する運営委員会(Steering Committee)を組織し、E4グループが2~3か月ごとにブリュッセルで持ち回り形式の会議を開催する。会議の開催費用及び参加費用は、各組織が自己負担する。必要に応じて、会議はオンライン又はハイブリッド形式で開催される。
 運営委員会は、E4グループ及び3つの協力機関(EI, BUSINESS EUROPE, EQAR)の計7機関から、各組織の代表者1名で構成される。委員は、EHEAにおける質保証に関する幅広い経験を有し、各組織を代表して意思決定する権限を持つ。
 会議の議長は、各組織が持ち回りで務めることが決定された。7名の運営委員に加え、ENQAのディレクターが事務局を務め、会議の運営、議事録の作成、必要に応じたフォローアップを行うこともあわせて発表された。

◆運営委員会の役割

 運営委員会の役割は、以下の6つの項目となっている。

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