欧州:学生向けの4つの戦略―オンライン学習を高等教育進学で活用するには?

オランダで奨学金事業や留学支援等を手がけるオランダ教育国際化機構(Nuffic)は、オンライン学習を高等教育の学位へつなげるための学生向けアドバイスをまとめたStudents guide to e-learningを2020年2月25日に発表した。同書では、オンライン学習(Eラーニング)を、①高等教育機関への入学、②既修得学習として認定されることによる高等教育機関での正規の教育課程の一部の履修免除につなげるために学生ができることの観点から紹介している。Nufficでは、これまでにもオンライン学習に関する提言を学習提供者や学習を認定する高等教育機関向けに公表してきているが、学生向けの情報はこのガイドが初めてとなる。

学生向けガイドでは、オンライン学習を受講する目的を次の3つに分類する。

  • 個人の満足のため
  • 就職につながる知識/スキル獲得のため
  • 高等教育への進学のため

このうち、3番目の目的のためにオンライン学習をする人を今回発表のガイドの対象とした。

オンライン学習が直面する課題

オンライン学習を正規の高等教育機関が既修得学習として認定するにあたり、Nufficは2つの課題を指摘する。1つ目は、認可外の教育提供者によって運営されている学習の場合。2つ目は、提供者は正規の教育機関だが、内容が正規の教育課程ではない場合である。例えば、世界的に著名な大学も提供者に名を連ねるMOOC(本サイト2015年9月8日掲載記事)の多くは後者のタイプに該当する。

こうした学習が学位につながりにくい理由として、オンライン学習が比較的新しい学習形態のため、対応策が確立できていない教育機関があるとガイドは指摘する。さらに、オンライン学習の質にはばらつきが大きいため、受講の修了判定が(試験などを通じて)正しく行われたか不透明なこともある。

オンライン学習を正規の学習歴にするためには?

ガイドでは、こうした困難を乗り越え、オンラインでの学習を正規の学習歴として教育機関での認定へつなげるために学生ができる4つの方法を次のように紹介している。

  1. 志望先が決まっている場合は、進学希望の教育機関がどのようなオンライン学習を入学または単位認定で考慮するかを事前に確認する。
  2. 志望先が未定の場合は、正規の高等教育機関が提供したオンライン学習を受講する。
  3. ECTS(NIAD-QE国際課まとめ)のような単位が取得できるオンライン学習を受講する。例えば、MOOCの中にはオンライン受講後の有料試験に合格することで単位が得られるものがある。例えば、ドイツのMOOCであるiversityでは2016年までECTS単位を付与する講座を提供していた(本サイト2013年12月12日掲載記事)
  4. オンライン学習の受講証明書だけでは情報が不十分と教育機関からみなされたり、オンライン上の受講記録が消失する可能性があるため、受講した場合は、講座に関する以下の記録を必ず保存しておく。
  5. 講義内容と期待される学習成果
  6. 学習成果達成度の測定方法の概要―口頭または筆記の試験があったか。オンラインではなく実地の試験があったかなど。受講者同士の採点や選択式設問のみの試験では不十分と教育機関からみなされることが多い。
  7. 学習提供者による本人確認手段―受講修了証が本当に自分のものであることを教育機関に証明するため、受講開始時と修了時の本人確認に関する情報が必要となる可能性がある。

このガイドの作成には欧州学生ユニオン(ESU)も協力しており、志望先の高等教育機関にある学生団体の利用も勧められている。学生団体を通じて志望校の問い合わせ先の部署や担当者が紹介されたり、オンライン学習の認定が志望先の学内で議論の対象となる可能性がある。

オンライン教育の世界的な発展

オンライン教育は近年世界的に発展している。中でもMOOCは、正規の教育機関が提供する点で大いに注目を集めており、例えば韓国政府は生涯学習としてのMOOCが推進されている(本サイト2018年8月13日掲載記事)。他にもオランダのデルフト工科大学は他大学が提供するMOOCでの学習を単位認定している(本サイト2017年1月19日掲載記事)ほか、インドのUniversity Grants Commissionも政府が設立したMOOC (SWAYAM)を積極的に単位認定するよう大学に呼びかける(本サイト2018年9月27日掲載記事)など、正規教育の一部としての認定も行われている。また、イギリスの勅許公認会計士試験では、エクセター大学が提供する指定のMOOCを受講することで一部受験科目が免除となる(本サイト2014年4月30日掲載記事)

MOOC以外のオンライン学習に対しても高等教育機関と連携する事例が見られている。2016年にアメリカの教育省は革新的な教育手法の受講者に対して試験的に奨学金を支給した。支給対象の中にはMOOCのほかに、プログラミング教育を提供するブートキャンプ型研修(本サイト2016年12月7日掲載記事)や低価格のオンライン教育サイトを運営するStraighterLine(本サイト2016年9月21日掲載記事)などが含まれ、各事業に対してはアメリカの大学が質の評価を行うことが条件とされた。

オンライン教育に対するNufficの取り組み

今回の学生向けガイドを刊行したNufficは、e-Valuateと呼ばれる欧州委員会の助成を受けたプロジェクトの中で他にも2つの報告書を発表している。オンライン学習が正規の高等教育機関から進学要件や単位として認められるために、学習提供者が留意する点をまとめたAcademic recognition of e-learning(本サイト2020年1月20日掲載記事)と、高等教育機関の職員の判断を助けるポイントをまとめたPractitioner’s guide for recognition of e-learning(本サイト2020年1月20日掲載記事)である。

また、Nufficは別のプロジェクトでもオンライン学習を取り上げており、MOOCを3つに分類し、その教育の質を評価するための7つの観点をまとめた報告書Oops a MOOC!を2018年に発表している(本サイト2018年5月15日掲載記事)

原典:Nuffic (英語)

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